楞厳呪(りょうごんしゅ)は、大乗仏典の『大仏頂首楞厳経』第7巻に説かれる陀羅尼のことで、具名は『大仏頂万行首楞厳陀羅尼』(だいぶっちょうまんぎょうしゅりょうごんだらに)といい、唐の時代、中天竺の般剌蜜帝が705年に漢訳したことになっている。これは、不空訳とされる『大仏頂陀羅尼』(具名『大仏頂如来放光悉但多鉢但羅陀羅尼』、だいぶっちょうにょらいほうこうしたんたばたらだらに)と同種のもので、密教系教団の依用した独立の陀羅尼である。標題中の「悉怛多鉢怛囉」(梵: सितातपत्रा [Sitātapatrā])は白傘蓋仏頂のことで、『白傘蓋陀羅尼』(びゃくさんがいだらに)とも略称される。 元代末期に最初の清規と言われる「勅集百丈清規」で「拐厳呪」として儀式中に取り込まれ、日本では大悲呪と共に現在でも禅三宗の依用陀羅尼になっている。

概要

807年に帰朝した空海請来の『大仏頂陀羅尼』 悉曇写本が大正蔵19巻に第944B(T0944B.19.0102c23 - 0105b22)として944Aの不空訳の後に、いずれも江戸時代の真言僧・浄厳の書写テキストが収録されている。真言宗において、『大仏頂陀羅尼』は付法の第五祖金剛智三蔵、第六祖不空三蔵、第七祖恵果和尚、そして第八祖弘法大師が等しく重んじている。『大仏頂陀羅尼』は『新訳梵漢両字大仏頂陀羅尼」と共に陀羅尼の中で最長のものであり、現在も読調されている『仏頂尊勝陀羅尼』に比してその文量は十倍を下らない。それゆえ弘法大師は『大仏頂陀羅尼』を唱える功徳は無量であるとし、真言宗の三業度人が受学すべき最も重要な陀羅尼の一っとした。

『大仏頂陀羅尼』、『大仏頂万行首楞厳陀羅尼』は同種ではあるが異同があり、木村俊彦らは密教依用のものを「唐本」と呼び、首楞厳経の巻第7所収のものを「宋本」と呼んでいる。また禅三宗が楞厳会等において用いているものを「元本」と呼んでいる。大正蔵第945『首楞厳経』の巻第7の末尾に続けてこの元本を付録掲載している。。現在では禅三宗で、楞厳会(りょうごんえ)などの際に唱えられており、中国では禅宗全般でよく朝の勤行として唱えられている。

現代日本語訳書

  • 木村俊彦『楞厳呪』「臨済宗の陀羅尼」1982年 東方出版 p.6–136、『楞厳経』巻7に収録される楞厳呪の注釈。臨済宗の日常諷誦用のテキストで、大正蔵とは字数等に相違がある。本稿は1978年12月~1980年10月に臨済宗機関紙『正法輪』に連載したもの。解題のほか有益な解説が掲載されている。
  • 木村得玄『楞厳呪:現代語訳と解説』2006年 春秋社 ISBN 978-4393177044

注・出典


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